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開発エピソード 3:和鋏の技

写真:和バサミの技

我々は、撚り糸を扱う装置を手がけたことがあります。撚り糸をその糸の径と同じ位の穴に通して処理をするのですが、穴を通す際には「撚られている糸の全ての繊維」が穴に入らなければなりません。この課題をクリアするには、切断された糸が毛羽立っていないことが絶対条件となりますが、これは非常な難題でした。

カミソリのように切れ味の鋭い刃を使えばよいかというと、話はそう単純ではありません。カミソリでは毛羽立ちを完全に押さえられないうえに、耐久性にも問題があり、実用的とは言えないのです。もちろん通常の鋏は問題外。他にもシャーと呼ばれる裁断機や回転刃、さらにはレーザーやウォータージェットなどの使用まで検討しましたが、芳しい結果は得られませんでした。

そんな模索の中、「糸を切るなら、裁縫用の和鋏は使えないか?」というアイディアが出てきました。早速数百円の和鋏を購入して試してみたところ、これが検討した中で最も良い切れ方であることがわかりました。その秘密は、刃の先端部が微妙にせり出し、互いに押し付け合う、和鋏独特の形状にありました。それまであれこれ苦労したことが、ごく身近な品物でいとも簡単に解決されてしまったことで、改めて先人の知恵に感服した次第です。

そんなわけで、ある世界的な製品の、少なくとも何パーセントかの生産を担う先端装置の心臓部に、お裁縫で普通に使われる和鋏がちょこんと取り付けられていたりするのです。